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日刊 温暖化新聞|あの人の温暖化論考

チェンジ・エージェントに / アラン・アトキソン

気候変動について学ぶことが、生涯続いていくであろうプロセスの第1段階だ。データを理解すること、変化のための戦略を立てること、効果的な実施のための計画を練ることが、持続可能な発展によって気候変動に対処するために不可欠な要素である。……が、これだけでは十分ではない。

このプロセスには、第1段階の前の「ゼロ段階」もある。それはまず、心にかけなければならない、ということだ。

報道されている世界中の出来事だけでなく、日々の暮らしの中にも、気づきが広がりつつあるという証拠を毎日のように目にする。21世紀に入って、「人間であることとは何か」に向かい合おうとする個人が増えてきている。最近では、これまであり得なかったような場所にも、こういった気づきが広がりつつある。大きな政治運動の「作戦司令室」から、小さな町にある学校の教室にまで、また、零細企業の開発計画から、巨大な軍事基地の作戦計画にまで広がっているのだ。さらに重要なことには、心にかけようという意思を態度で示している人が増えている。そして、その人たちのそういう気持ちが積極的なかかわりへと変わり、やがて行動につながって……生涯をかけたライフワークの一部として全力を傾けるまでにさえなる。

心にかけることが最初のステップだ。「心にかける」とは、単に感じることではない。それは、価値観と倫理的な理念から生まれる、全力を傾けたかかわりに向けた動きである。私たちは、問題が深刻かつ重要なものだと信じるから、その問題を心にかける。そうしなければならないと信じるから、問題の解決のために行動する。何かのことを本当に心にかけるとき、私たちは、ハムレットのようなためらい——つまり責任を逃れたいというわがままな気持ち——を乗り越える。「義務」という言葉が、重荷ではなく、神から授かった天職のように思えてくる。

持続可能性という課題——とくに、人間が引き起こした地球温暖化や、世界中で衰えている自然システム、そして、このような環境問題を引き起こす原因でもあり、環境問題の結果として増大しつつもある世界の貧困と不公平の定着——は、世界共通の人間の義務となった。今や、このような問題に気づかずにいることはできない。それを無視することはもはや、倫理的に擁護できないことだ。私たちは、自分たちの命がそれにかかっているかのように、持続可能な発展をしなければならないのだ——なぜなら、ますます多くの人の命が、持続可能な発展ができるかどうかに左右されるようになっているからだ。

だが私たちは、気候変動のような悪い知らせに落ち込むのではなく、問題を「やりがいのある挑戦」と考えることができる。大きな地球規模の問題に取り組むことで、明確な目的意識をもつことができる。そして幸いにも、この目的意識を共有する人の数は増えている。毎日、ますます多くの人たちが朝目を覚ましてはこう自問するようになっているのだ。「私たちはどれだけ速く変化を起こすことができるだろうか? そのために自分には何ができるだろうか?

できるだけ多くの人が、自分個人の「人生の使命」の一部としてこの課題に取り組む必要がある。持続可能性は、急速に広がりを見せているとはいえ、それが解決しようとしている問題の成長曲線に比べれば、まだ大きく遅れをとっている。そして、1日遅れるたびに間違いなくコストが生じるのだ。その損失は少しずつ追加的に増えていくこともある。また1頭のパンダが姿を消すとか、バングラデシュのある家族が、生き残れる確率が低い中で辛うじて生活していこうとするストレスに屈するとかというものだ。しかし、そのコストが莫大で、しかも突然に起こることもある。気候変動が原因で起こった高潮が都市の洪水防御・避難計画を打ちのめしたり、ある生物種全体にとって適切な生息環境がもはや残っておらず、移り住める場所がなかったりという状況だ。

このような目に見えない引き金や「ティッピング・ポイント(そこを超えるとそれまでにはなかったような急激な変化を起こすポイント)」のことはよく耳にするようになってきたが、たいていの場合、私たちにはそれがどこにあるのかわからないし、種の絶滅や、壊滅的な洪水、子供の無駄な死といった損失を避けるための行動の期限が具体的にいつなのかもわからない。もしも私たちが真剣であるなら、もしも「心にかけること」が何かを意味するはずなら、持続可能性への転換をもっと速く……そしてますますすばやく起こすために最善を尽くすよりほかに、倫理的な選択肢はない。

真の希望の礎は、私たちの生活の中心的な指針の1つとして、この課題——この責務——に取り組もうとする私たちの意欲にある。

アメリカのテレビで活躍するコメディアン、ジョン・スチュワートは、アカデミー賞授賞式の司会者に選ばれたとき、こう答えた。「私もがっかりしている」

アメリカ大統領エイブラハム・リンカーンでさえ、若いときの恋愛についてこう書いている。「私を受け入れるほどの愚か者には私は決して満足できない」

私が1990年代前半に、ワークショップの進行役として招かれたり、スピーチをしたり、さまざまな「専門家としての助言」をしたりする機会が増えてきた頃、私の頭にも同じような考えが思い浮かぶようになった。「私が専門家と認められるようじゃ、世界は絶望的な状態だ」

上司に言われてまたは自分の良心に命じれられて、地球の隅々を持続可能な発展に向けて動かそうという公式または非公式の任務を負った人が、「自分には荷が重い」と思うのは、きわめてふつうで当たり前の反応である。

だが事実はこうだ。「世界を救う」ことに関して言えば、いや、もっと正確に言うと、私たちのシステムを、崩壊のシナリオではなくて、自然や人間にとって持続可能な結果をもたらしてくれるシステムに変換するという話になると、私たちには私たちしかいないのだ。

希望を持ち続けようと本気で努力する人や、自分の能力以上の任務に“召集”されてしまったという感覚がまだ重荷に感じられる人は、次のようにしてみるとよい。解決方法について読んで知ろう。インスピレーションを求めて書物を読もう。たとえどんなに小さなことであっても何かをやろうと決心し、……そして自分たちの小さな行動が数百万人の心を動かすことができると気づいたふつうの人々の話を読もう。そこに目を向けさえすれば、そのような話が何千何百とあることがわかるだろう。

または、本を読まない人はテレビを観よう……だが、目的をもって観ることだ。ジュディ・アレクザンダーの話のようなものを探すとよい。ある日私は、人気の動画サイトYouTubeを検索していて、この話を見つけた。ジュディは、『成長の限界』の主著者であるドネラ・メドウズのワークショップに参加し、その後「私たちの町を変えるための20年間の誓い」を立てた。シアトル近郊に住んでいるジュディは、自宅の小さな庭で自分用の食料を育てることで、環境や気候への負荷を減らす試みを始めた。今では、自分やその他の何人かでは食べきれないほどの膨大な量の食料を育てていて、地元の小さなコミュニティだけでなく世界の人々を勇気づける見本となっている。本人の表現を借りれば、ジュディは、化石燃料や商業的な食糧生産への依存を減らすことがどれほど簡単であるかを実証するために、「自分を自分の実験台として使っている」のだ。

そう、気候変動に対処するには大きな変化が——政治的な変化も技術的な変化も——必要である。だが、大きな変化を起こすためには、多くの人たちが進んで小さな1歩を踏み出し、それからより大きな1歩へと進めていかなければならない。心にかける、学ぶ、夢見る、行動する、というように。そして、それとともに、自分のことは自分でやり、希望をもちたいという欲求を自分で満たすことだ。

自分自身の目的意識とインスピレーションを持続させるためには、私たちが目の前にある全世界的な大きな課題の解決に時間と資源を喜んで捧げることこそが、おそらく「持続可能な発展」の最優先課題だろう。

本文は、アラン・アトキソン著『The Isis Agreement: How Sustainability Can Improve Organizational Performance and Transform the World(イシスの約束:持続可能性はどうすれば組織の業績を向上させ、世界を変えることができるか)』を、許可を得て改編したものである。
さらなる情報については、http://www.atkisson.com/を参照。

(2009年3月10日)

アラン・アトキソン

 

Profile

アラン・アトキソン
アトキソン・グループ設立者、代表

米国ミズーリ州生まれ。「人間的で持続可能な文化」をテーマとする季刊誌「In Context」の編集者を経て、サステナブル・シアトルを立ち上げる。1992年に国際的なコンサルティング会社「アトキソン・グループ」を設立。環境的に持続可能な方法での社会発展とイノベーションを掲げ、北米・ヨーロッパ・オーストラリア・アジアなどで、企業や自治体へのコンサルティングを行っている。著書に『カサンドラのジレンマー地球の危機、希望の歌』(PHP研究所、2003年)他。

 
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